蛭子未央(1987年・東京生まれ、武蔵野美術大学卒業)は、これまで初個展「おいしい軟水」(2012、Bambinart Gallery)の開催以来、「ひあたりと風通し」(2013、Bambinart Gallery)、「家電」(2014、taimatz)、「中毒とその壁」(2016、Bambinart Gallery)、「6月17日と2月の間の不条理な日常」(2017、Bambinart Gallery)とギャラリーでの新作個展を重ねてきました。また奈良美智を部長としたプロジェクト「青い森のちいさな美術部」の成果展「森をぬけて。」(2012、十和田市現代美術館周辺中心商店街ほか)に参加したほか、「アートがあればU」(2013、東京オペラシティアートギャラリー)、「片山正通的百科全書」(2017、東京オペラシティアートギャラリー)などに出品しています。ほか韓国、別府、博多、イギリス、ベルリンなど国内外でグループショウに参加するなど注目の若手アーティストです。現在は、ベルリンに在住、制作活動の拠点としています。
「私は今まで、風景を見る対象として見ていなかったと思う。圧倒的に雄大な自然と別にして、自分が関われるソフトな自然というものは、主語が消え、主体が消えた状態が一番いい。反対に今の私の生活圏であるイギリスとドイツでは、景色を見るときの主体は自分の中に存在している方が、景色と自分の距離を近く感じられる。自分の住んでいる場所についてなんて、作品のテーマでないのなら、特に語る必要もないのだけれど。外国にいると語りたくなってしまうのは、やはり環境と気候が与える人格への影響が否定できないから。それは西とか東とかの構造ではない。気候の結果として見て、そこの気候に私が存在するのであれば、それに倣ってみよう。そういう心持ちである。
身体は細胞でできていて、3年で全て入れ替わるらしい。他の物質も何かの集合体なわけで、個と個というのはアウトラインははっきりしていなく、いつでも交わる可能性がありそうだ。化学の領域のことは詳しくないが、実感がしやすいなと思う。髪の毛が自動的に伸びるのもすごいなといつも思うし、植物もよくこんなに育つなと感心する。そんな風に劇的に変化、動いている生物の持つ「個」というもののアウトラインは鉄のように硬質ではなく、もう少し柔らかい粒子のようなものだと思っている。」(蛭子未央)
どうぞご高覧ください。