秋山泉、玉利美里
秋山泉は紙に鉛筆で何度も線を重ね、ぼかしながら、広い空間に器が佇む静寂の世界を表現しています。 描かれた器はその存在を主張しながら、そこに浮遊する空気や大気をも取り込み、画面の中に静かに溶け込みます。 光りと影が交じり合うその質感は、物質としての「もの」だけの存在ではなく「ものが在る」ということの存在感を強烈に訴えかけてきます。
玉利美里はキャンバスに鮮やかな色彩のコントラストで、日常と空想が混在するかのような世界を作り上げます。 モチーフはわずかな具象性を残し、一見すると平面的でありながら、画面全体に施された重厚なマチエール、絵の具の繊細な盛り上げなど、 レリーフ的に捉えられた「空間性」を有し、今日の情報化社会において時折目にすることのある「映像のブレ」のような不思議な世界観を喚起します。
それぞれに手法やテーマなど対照的な作風ではありますが、極限までにそぎ落とされた色彩と形象で構成されているという共通点のある二人です。 80年代生まれの若い女性作家の競演をお楽しみ下さい。