このたびBambinart Galleryでは、スクリプカリウ落合 安奈 個展「mirrors」を開催いたします。1992年、埼玉県に生まれたスクリプカリウ落合は、2016年、東京藝術大学美術学部油画専攻を卒業、東京藝術大学大学院 GAP(グローバルアートプラクティス)を修了したのち、現在は東京藝術大学大学院博士課程彫刻専攻に在籍し、制作活動を行っています。
2012年以降、継続的にインスタレーション作品を発表しており、主な作品に、写真にビニールを縫製した「明滅する輪郭」ほか、素材やメディア、表現手法に捉われないインスタレーション作品を制作・発表してきました。
本展では、ペインティングの作品を発表。また同会期でnap galleryにて新作個展「骨を、うめる」を開催。二会場で新作個展を発表します。
−猿の中に人をみて、人の中に猿をみる−
スクリプカリウ落合安奈
二年前のある春の日、私はカメラを片手に動物園にいた。そこで、予期せず、生まれて初めて猿に目を奪われることになる。衣装のようなユニークな毛を生やした者や、腕がとても長い者、様々な特徴を持つ猿たちが並ぶエリアを行ったり来たりしているうちに、離れることができなくなった。
もちろん、猿を見たのが初めてというわけではない。しかしこの時突然に、他の動物が目に入らないほどに 猿に惹かれたのだった。
その理由について考えながらも、これまでの一貫した関心事としての、「祖国に根をおろす方法」や、コミュニティー間に起こる摩擦や、マイノリティーへの差別、偏見という生物現象に対し、「土地と人の結びつき」というテーマのもと、国内外各地で土着の風習や祭りに関するフィールドワークに取り組むようになる。その中で、人間の「同質性」(根源的な共通性)と「異質性」(土地や民族による差異)についての発見と考察を重ねてきた。
時間と経験を経て、ある時、それまでの制作と二年前の出来事が結びつく。人の中から見出そうとしていたものを、私はあの時、猿の中に見ていたのだ。
どうやって異なる種の猿が同じ森に共存しているのか、どうして他の動物より人と一部の猿は白目が露出しているのか、どうして種によってヒエラルキー構造のルールが違うのか、そもそも種の分かれ道の原因はなんなのか、私たちはどれだけ違っていてどれだけ同じなのか......
猿の世界を見ているつもりが、リフレクションとして人間の世界や人の成り立ちが見えてくる。
猿と人に向き合いながら、外見や民族や文化、信仰などの違いから生じる、分断や摩擦を緩和する糸口の模索の軌跡と獲得した手触りを、新しい絵画シリーズとして発表する。
弊ギャラリーでは、「trance」(2017)、「明滅する輪郭」(2018)に開催の個展に引き続き3度目の個展です。本展では、自身初となる新作絵画を発表します。どうぞご高覧ください。