林祐衣は、1989年福岡県に生まれ、2013年東京藝術大学を卒業、これまで「湿度」と「ノイズ」を描くことで画面のなかに差異を生み出し、時間の感覚を主題に描いてきました。
本展のタイトル「フォルト/ダー」は、フロイトが発見し、提唱した「不在と再会」を示す子どもの象徴的な遊びの名称です。林が絵画を描くときに幼少時から常にもつ反復脅迫の感覚を、消滅と再現の図式を持つ「いないいないばあ」になぞらえて展覧会タイトルとしています。
「私はこのような遊びに夢中になっていた。 まず、一番のお気に入りの人形の首に長い毛糸を結び、毛糸の先は私がしっかりと手綱として握る。 私は陽射しが射し込む明るく賑やかな部屋にいる。毛糸で結んだ彼女を、当時私が恐ろしくて仕方がなかった屋根裏の暗い納戸へ閉じ込めるのだ。 私達を繋いでいるのはその一本の毛糸だけで、それを握っている手から彼女の恐怖感が伝わってゾクゾクしていたものだ。 今思うと、彼女は私自身だったんだろうと思う。」(林祐衣)
林は、今もなお続く「フォルト/ダー」を手掛かりとして、日常に潜む「永遠性を帯びた瞬間」を切り取り、手懐けるべく、時間の特異点に向かおうと試みています。
本展では、新作と国内未発表の作品を中心に紹介します。どうぞご高覧ください。