このたびBambinart Galleryでは、多田恋一朗個展「次元打ち鳴らす君のBEAT」を開催いたします。
多田は、1992年東京都に生まれ、2016年東京藝術大学美術学部絵画科を卒業、現在は東京藝術大学大学院油画技法材料研究室に在籍しています。多田が描く絵画作品のモチーフは、サブカルチャーの影響による人物表現、特に少女が描かれていることが特徴的であるのに対して、色彩、筆致などから抽象表現主義を思い起こさせるなど、アカデミックな視点・手法が用いられています。
多田にとって、現代の人物画とは、人体の骨格を正確に再現することで獲得できるものでも、キャラクターとして割り切った図像を用いることで獲得できるものでもありません。二次元の空想的観念と、三次元の現実感(リアリティ)の両方を内在させることで初めて獲得できるものであると考えています。妄想と現実がシームレス化した感覚を、世界の一つの側面として体感できる絵画体験を提示することで、2Dの可動域を拡大していきます。
幣ギャラリーで開催したグループショウ「Emerging Artists 2016」、「Still Life」の参加に続く、新作個展を開催いたします。どうぞご高覧ください。
「漫画とかJ-popとかの中の物語って他人が作ったいわゆるフィクションだけど、その物語の中のキャラとか詩に自分を投影するのって最高にエキサイティングなんだよね。エキサイティングすぎてそれがフィクションであるってことも忘れちゃってさ、そのうち家族とか友達とか恋人とか現実のコミュニケーションにまでその感覚を持ち出しちゃうんだ。目の前で俺に向かって何か話してるその『相手』が、俺と同じ人間だってことは分かってるんだよ?分かってるんだけど、俺が感じることが出来るのってそいつの台詞とか仕草まででさ、キャラクターを見る時の感覚とかとそこまで変わんないっていうか。そこから『相手』の人格を読み取ってもその人格ってもう完全に俺の妄想なんだよね。『相手』の台詞とか仕草を俺の経験に照らし合わせて形成してるだけ。皆人格が在る人間なはずなのに、無意識にキャラクターみたいにパッケージングしちゃって、なんかもうどこからが現実でどこからが妄想か分からなくなる。だけど俺はこの感覚が間違ってるとは思ってないよ。『現実見ろ』ってよく言われるけどさ、俺は俺の現実を見てるよ。この妄想と現実がシームレス化した世界が俺の現実なんだ。」(多田恋一朗)