このたびBambinart Galleryでは、小林丈人、忽滑谷昭太郎、和田百合子の3名によるグループショウ「無題の先」を開催いたします。
小林丈人(こばやし・たけと、1981年東京都生まれ)は、多摩美術大学大学院を修了、絵画、ドローイングを中心に立体、インスタレーションで世界の事象が連動している様子やそれらの関係性を表現するほか、共同でアーティストランのオルタナティブスペースを運営し、企画展をディレクションするなど幅広く活動しています。
「風景や静物、人物(人体)などをたよりに絵を描いている。それは、僕が今まで何らかで体験したはずの物事だ。その雰囲気、感覚をそのまま画面に定着させようとするのではむしろなく、身体を伝って移される筆致の集積は、その度に絵をうごかすものだから、いつの間にかたよりになるものが他の何かに変わっていることはいつもあり、僕は最も動的な瞬間をとらえることに集中することになる」(小林丈人)
忽滑谷昭太郎(ぬかりや・しょうたろう、1981年東京都生まれ)は、武蔵野美術大学を卒業、絵画のモチーフとするためドローイング、切り絵、立体なども制作しますが、絵画に主眼を置いて制作、発表しています。何ものでもないが、何ものかとして着地している具象画を描いており、その正体には固執することなく鑑賞者に委ねています。
「多様化した表現がある中で、絵は過ぎ去ったものとして捉えられているかもしれないけど、描いているとまだ割り切れていない小数点の続きみたいなものを見せてくれることがある。もし、なにかの拍子で何年も何年も残って今ある歴史も漂白されてしまったとして、それを掘り起こして見た未来の人があれこれ考えながら見るとしたらその小数点のところを見ると思う。」(忽滑谷昭太郎)
和田百合子(わだ・ゆりこ、1986年神奈川県生まれ)は、東京藝術大学大学院を修了、ドイツに留学。パイロットであった父の影響で、宇宙と日常を同列でイメージする感覚が備わっており、特異な視点でモチーフだけでなく支持体にも目を向けます。これまでパネルの裏に描くシリーズや、塩ビ管の中に絵画をはめ込む覗き穴シリーズなどを発表しています。
「世界は混沌としていて、あらゆる事物について、はっきりとした境がない。そんな中で私たちは生活している。光も闇も、表も裏も、幸も不幸も… ある視点から黒に見えれば、またある視点からは白にみえるのだ。無限に続いていく理不尽さのなかで…だからこそ私は「絵画は説明出来るものであってはならない」と、思う」(和田百合子)
いずれの作家も、日常における無定形な感触の正体を、芸術という手法を用いて、結晶化しようと試みています。主題や目的が明確であった芸術は、主題を失い「無題」を名乗るようになり、概念そのものが問われるようになりましたが、知覚的な探求はまだ続いています。作者の意図を超えて結晶化された芸術は、「無題」から先の領域へと歩を進めていくことでしょう。