このたび、Bambinart Galleryでは、多田佳那子展“愛の中のひとり”を開催いたします。
多田佳那子(ただ・かなこ/1989年、広島県生まれ)は、武蔵野美術大学を卒業後、大学院に進学、2013年に弘益大学校(韓国)に留学し、現在は武蔵野美術大学大学院2年に在籍するアーティストです。
多田は、日常の生活を営む『私』と、自らを生と死が組み込まれた個体として意識する『私』の両者を、共生する2つの『私』として自覚しています。日常が遠ざけがちな、生と死の文化に向き合い、どのように接していくべきなのか、絵画を制作することを通して手がかりを得たいと考えています。
多田の制作プロセスは、一度完成させた絵画に、まったく別のモチーフを描き加えたり、利き手でない手で描いたり、目を閉じて描いたりします。そうすることで、画面にアクシデントを発生させて、多田自身の意図を超えた絵画の先の絵画の再生を体験し、生きることの源泉を見つけようとしています。
また多田は、主に人物を描きますが、構図とモチーフはアングルの『泉』やマイヨールの『ヴィーナス』などの名画、音楽雑誌の表紙、週刊誌のグラビアなどから脈絡なく引用します。モチーフが持つ意味や背景、多田との関係性は重要ではなく、制作へのフックとして機能しています。
一度は完成された絵画−構図や色の組み合わせが優れた−を超えて、その先の絵画が再生を果たしたとき、その一点一点の積み重ねが生と死の文化の深淵を多田にのぞかせることでしょう。
どうぞご高覧ください。