本展では、それぞれの視点で切り取られた、あるいは現出された「何処かのある場所」を表現するペインティングとフォトグラフによる3名のアーティストを紹介します。
寺内誠(1980年生まれ)のおぼろげで幻想的な絵画は、日常の風景の中に見い出したものや、そこから呼び起こされる記憶の断片たちで構成されています。それは、現実から派生した虚構であるにも関わらず、感覚としてのリアリティは、実際の体験よりもよりリアルで真に迫るものがあるのだと気付かされます。
寺島茜(1980年生まれ)の透明な空気感を帯びたアクリル画は、実際に見た光景ではないにも関わらず、誰もが知っているような、絵本の中のワンシーンを描いたようなやさしさに満ちています。寺島の作品の多くに登場する動物たち、黄金に光る草原、夜の闇に光る怪しい眼は、私たちにある種の既視感をもたらします。
長瀬恵(1984年生まれ)の写真作品に通底するテーマは、誕生と同時に死が存在を成立させる、明暗の共依存とでもいうべき関係性です。光明の手掛かりを求めて彷徨うレンズは、辛うじて光景を捉えます。作品がメランコリックに感じるのは、その光景とひとの記憶がどこかで繋がっているからなのでしょう。
見知らぬ場所でありながら、どこかしら懐かしさがつきまとう。
私たちが生まれながらに持っている記憶の在り処が、ふと共振し、懐かしい気持ちを呼び起こすのかもしれません。
there. ぜひご高覧ください。